「あけましておめでとう!!」
時計の秒針が文字盤の十二を回った瞬間、そこにいた皆が高らかに叫んだ。
2004年――新しい年の始まりだ。
俺は昂ぶる感情を感じながら、一方では冷めてその中にいた。理由は二つ。新しい年になることへの希望と言うものがなかったことと、時が過ぎることへの憂鬱だ。いわゆる「ピーターパンシンドローム」と呼ばれるものに近いのかもしれない。俺は、老いていくのが嫌なのだ。
何となくその場に居づらくなって、俺はバルコニーに出た。
外はかなり寒い。肌が刺されるような冷気を感じた。だが、それも心地よい刺激だった。
「――どうしたの?」
不意に呼びかけられた。後ろを見ると、マミが居た。俺の幼馴染だ。
「――いや、別に」
「なんか憂鬱そうだよ?」
「……まぁな」
俺は渋々認めると、周囲の景色へ目をやった。
…………。
微妙な間の後、マミが俺の顔を覗き込んだ。
「ねぇ、一緒に初詣行かない?」
「は? みんなで行くんだろ?」
「黙って行くの。良いじゃん、行こうよ」
「……まぁ、良いけど」
「よし、決まり♪」
と、マミはとても嬉しそうだった。それを見て、俺は笑ってしまった。
「何よ、突然笑い出してっ」
「いや、なんでもないさ」
――変なことで悩んでたのが馬鹿らしくなったのさ、と、俺は心の中で思っていた。