Let's Treasure Hunt !!






「……何だよ、これ……」

 俺はとりあえず呟いた。他にどうリアクションをして良いのか分からなかったし、何か変わったリアクションを取ってみた所で、何も変わらないだろう事が目に見えていたからだ。そばに友達の一人でもいればツッコミの一つでも入れる所だったが、あいにく俺は一人だった。一人でツッコミを入れているのは寂しい。

 さて、簡単に状況を説明すると――、そこは、白かった。天も地も、全てが白一色だったのだ。辛うじて、地面が存在することが分かる程度で、遠くにいくにつれて天と地との境が曖昧になって、地平線など見ることも出来ないのだ。さらに四方が明るいので、自分の影もない。――そんな所に一人でいるのだ。とりあえず呟くほかないだろう。

 歩いてみるだけの価値があるようには思えなかったが、ただ黙って立っているのもまた無意味だと思い、俺は歩き出した。あっちへふらふら、こっちへふらふらと歩き回る。目印がないから、自分が真っ直ぐに歩いているのかさえも良く分からない。平衡感覚が狂った。嘔吐感が込み上げてきて、俺は座り込んだ。

 ハァ、ハァ、ハァ――

 どれだけ歩いたか分からない。ただ、とてつもなく息が上がっていた。空気が薄いのだろうか? いつもなら、こんなことはないのに……。

 ――えっと、息を整えている内に、自己紹介でもしよう。

 俺の名前は高嶺悠平。ごく普通の公立高校に通う高校二年生だ。よく、高二になると中だるみがどうのと言われるが、俺にはまったく無縁だった。最初からたるんでいる人間には、関係のない話だろう。……あまり自慢出来たことではないが。ただ、俺にも力を入れているものはあった。サッカーだ。こればかりは、誰に何と言われようともやめるつもりはない。将来は当然プロになりたいと思っている。が、なかなか親に分かってもらえていないことが口惜しかった。

 ……ふぅ、なんとか息も収まってきたな。部活で鍛えててもすぐに息が上がっちまうなんて、ここはどうなっているんだろうか?

 俺はあれこれと思考を巡らせた。ここは某国の秘密基地じゃないかとか、俺は宇宙人に連れ去られたんじゃないかとか、とにかく突拍子もないことばかりだ。しかし、どれだけ現実離れしたことも、今のこの状況を的確に表しているものはなかった。

「はぁ……」

 俺は溜め息をついた。やはり、あれに触れなければならないのだろうか? 出来ることなら、気付かないフリをしていたかったんだが……。

「――で、お前は何なんだ?」

 諦めて、俺はそれに向かって訊いた。

「見ての通りだよ」

 と、そいつは楽しそうに言った。けど、こっちはちっとも楽しくなんかない。確かに、俺は今話し相手が欲しいと思っていたさ。だがそれはこの状況を共に分かち合ってくれる人という意味であって、誰もこの場にピエロを呼んでくれなんて言ってないのだ!

「――まぁ、いい。こうなりゃ何でもありだ。この際だからゴジラにでも会わせてくれ」

 俺は半分以上ヤケになっていた。どうしていいか分からなくなっていた所に、いつからいたかも知れないピエロだ。ヤケになるなと言う方が無理ってもんだ。

「まだ若いんだから、ヤケになりなさんなって♪」

「……ムカつくヤツだな」

「あんまり怒ってると、小じわが増えるよ……っと、これは女性に言うセリフか」

 と、ピエロは一人でケタケタと笑い出した。

「ホントに何なんだよ、お前は!」

「おっと、失礼。自己紹介がまだだったね」

 突然、ピエロは俺の方に向き直ると、帽子を脱ぐ仕草をしながら、お辞儀をした。

「私はカムルと申しまする。この世界の管理人をしてまする」

 おどけながらそう名乗ると、ピエロは紙吹雪を演出して、

「ようこそ、Between Worldへ!」

 と叫んだ。

「びといーんわーるど?」

「そう、直訳すると『世界の間』だよ」

「世界の……間?」

 俺の頭の中は混乱するばかりだ。と言うか、英語は嫌いだ。

 ん〜、と、カムルは少し考え込んだ。

「まぁ、要するに、あの世とこの世の間ってこと。普通の人は死ぬまで来ない所だね」

「ちょっと待て! ……ってことは俺、もしかして死んじまったのか?」

「いや、それは違うよ」

 カムルはすぐに否定してくれたので、俺はひとまずほっと胸を撫で下ろした。

「けど、そうなるかもね」

「って、期待させといてそれかよ!」

「ダイジョブ、ダイジョブ。簡単なゲームをすれば元の世界に帰れるから♪」

「ゲーム?」

「そう、ゲーム」

 と言うと、カムルは俺のほうを指差した。

「後ろを見てみなよ」

 その言葉に従って後ろを見、俺は驚いた。

「な、なんじゃこりゃ……」

 そこにあった、物、もの、モノ。数え切れないほどの様々なものが、辺り一面に――と言うか、地平線の先まで果てしなく広がっていたのだ。

「ゲームは宝探し。この中から君の一番の宝物を探し出すんだ。探し出せたら君の勝ち。制限時間は特にないけど、君の現実世界にいる本体の寿命が尽きたら終わりだ。――どう、簡単だろ?」

 カムルはまるで、ジャンケンのやり方でも説明するように言った。さも、簡単そうに。

「どこが簡単なんだよ! こんなにたくさんあったら、探しようがないだろ!」

 むぅ……と、カムルは頬を膨らませて、

「やっぱダメ?」

 と、子供のように訊いた。

「ダメじゃなくて無理!」

「せっかく、世界中のものを集めてきたって言うのに……。ま、しょうがないか。――えぃっ!」

 カムルが掛け声と共に腕を降ると、たちまちにほとんどのものが消えて、一山を残すだけになった。

「君と関係の深いものだけに絞っておいたよ。これなら、文句ないだろう?」

「あぁ、まぁな」

「じゃあ、ゲームスタートだ!」

「あ、ちょっと待て!」

 俺が慌てて止めると、カムルは明らかに嫌そうな顔をした。

「……まだ何かあんの?」

「いや、何で俺がこんなことをしなきゃいけないのか知りたくなってな」

「訳は宝を見付けたら教えてあげるよ」

 と、カムルは悪戯っ子のように笑った。

「……分かった」

 俺は仕方なく、『宝探し』を始めることにした。

「――とは言ったものの、どっから手をつけていいものやら……」

 前より大分減ったには減ったが、それでもまだ俺の家のあらゆるものに加え、学校で関係のあるものなどかなり多くのものが積み上げられていた。この中から俺の宝物を探せってのか……。

 その時ふと、俺は思った。

「……俺の宝物って何だ?」

 意外なところに盲点があることに気付いた。今まで自分の大切なもののことを真剣に考えたことはなかったし、考える必要もなかった。恐らくそれはいつでも自分の側にあっただろうから。失うまでは気付かない、そんな感じなのだろう。だが、今は見付けなければ。考えろ、考えるんだ。

「ふふふ、悩んでるね〜」

 と、カムルは意地悪く笑った。

「小じわが……」

「同じネタを使うな」

「わ、ツッコまれちゃったよ」

 と、カムルはまたケタケタと笑った。

「――さて、どこから手を付けるかな……?」

「わ、無視されちゃった……」

 無視だ無視! こいつに付き合ってたら日が暮れちまう。……って、ここに日没なんてないやんっ。

 自分に軽くツッコミを入れてから、俺は一まず山の周りを一周してみた。

「ん、何だあれ?」

 ふと、気になるものが目に映った。俺はそれの側に寄っていった。

「……人形か?」

 そこには、俺と同じクラスで、可愛くて頭も良く、クラスはおろか学年全体の男子から――俺も例外でなく――狙われている、飯野彩夏の人形らしきものがあった。だが、人形にしては肌の質感とかが似すぎのような……って、本人を間近で観察したことがあるわけじゃないからわからんけど。そんなことしてたら、犯罪者になってしまう。

「あ、それは一応本物と同じだよ」

「一応?」

 意味深だな。

「本物をまるっきりコピーしておいたから。寸分違わずね」

「ってことは……」

 ……。

「――ねぇ、今Hなこと考えてなかった?」

「ギクッ!」

「……図星だね」

「――しっかし、飯野が選べるんなら、俺の宝物はこいつで決まりだな」

「……逃げたな」

 うっ……視線が痛い。

「……ま、いいけどね。因みに、彼女は正解じゃないよ」

「え、何でだよ? 俺は彼女が好きなんだぜ?」

「好きっても、それは飯野さんがが可愛いからでしょ? 彼女になれば友達に自慢できるとか、そーゆーこと考えてない?」

「う……」

「これも図星だね」

 と、カムルはまたも、ケタケタと笑った。――ホント、ムカつく奴だ。言うことがいちいち当たってるから余計にムカつく。

「……分かったよ。また探せばいいんだろ」

 仕方なく、俺は宝探しを再開する。

 何分か山をあさっていると、よくもまぁこんなものまでというようなものがたくさん出てきた。蓋の閉まらなくなったほ乳瓶だとか、片足のなくなったヒーロー人形だとか、くたびれたランドセルなんてのがあったのだ。こんなものが宝物とは思えないんだが……。

 さらにがさごそとあさってみると、何やら大きな板のようなものが現れた。

「ん……これは……?」

「見て分かんないの? ドアだよ、ドアっ」

「んなことはわかってる!」

 そこにあったのが柱までセットになったドアだということは分かった。だが、それが自分とどう関係のあるものかが分からなかったのだ。家で使ってるものとは違うし……。

「おやぁ、分かんない? 柱をよ〜く見てみなよ」

 ……ホント、いつ自分のこぶしが奴に向かって飛んでいくのか、恐ろしいよ。

「柱なんかに何があるって……」

 言うんだ? と続ける必要もなく、俺はそれを見つけてしまった。

 そこには、鉛筆で印しと数字が書いてあった。少しかすれたそれを読み取ると、5とか6とか書いてあり、そのすぐ横に棒線が引っ張ってあった。

「これは……背を測った跡か……」

 恐らく、俺が小さい頃、それも小学校入学前ぐらいまでの身長の記録がされているのだろう。確か小学校に入ったすぐ後にリフォームをして、ドアを変えたはずだ。

 ……でも待てよ。今はどっかの処理場で灰になるか埋め立てられるかしてるはずのものが、どうして宝物になり得るんだ?

「なぁ、これって……」

「間違えてはないよ。そのドアでいいんだ」

 カムルはニヤニヤと笑いながら、俺の問いを遮った。

「間違いないったって……」

 今は灰になってるはずのものが宝なんてことはないだろうし……。もしかして、形は問題じゃないってことか? 形が問題ないってことは……まさか?

「……一つ訊きたいんだが、宝ってのは形がなくてもいいのか? もっと言うと、実体がなくてもいいのか?」

「さぁ? それは僕が決めることじゃないから何とも言えないなぁ」

 ……ふぅ、危ない危ない。一瞬殺意が芽生えちまったぜ。って言うか、俺の宝物なんだから、あいつに決定権がないのは当然だったな。今ので殴りでもしてたら、俺が悪いのは明らかだ。

 ……ん、ちょっと待てよ? 俺が決めるってことは、俺が『これが宝だ!』って断言したら、あいつは何も言うことは出来ないじゃないか! これで元の世界に戻れるっ! ……ってか、何で今までこんなことに気付かなかったんだろう……。

「ホント、何で気付かなかったんだろうねぇ〜?」

 めちゃめちゃ皮肉を込めた笑顔で、カムルは言った。

「……って、俺の心を読んだのか?」

「ご名答〜♪ よく分かったねぇ?」

「それぐらいありそうだと、さっきから思ってたからな」

 と、俺は得意になって言った。

「――って、そうじゃなくて」

 ヤバイヤバイ。危うく乗せられる所だった。

「そのことに気付いたんだから、ここにいるのは無意味だろう。早く元の世界に帰してくれ」

「ダメだよ」

「なっ?」

 俺は思わず頓狂な声を上げてしまった。

「さっきやって見せたでしょ? 僕は君の心の中が読めるんだ。ってことは、君の中に少しでも『これは宝物じゃない』って気持ちがあったら、僕にはそれが分かっちゃうって訳さ」

「な、なるほど……」

 得意な笑みが少しムカついたが、俺は納得させられてしまった。

「となると、大分厄介だなぁ……」

 俺は積み上げられたもの達を見て、溜め息をついた。結局、何の手がかりも掴めてないのだ。

「ほらほら、頑張んないと寿命が切れるよっ。もしかしたら、君の寿命はあと一年かもしれないんだから」

 応援してくれているつもりらしいが、俺にとっては耳障りなことこの上ない。黙って欲しい所だぜ。

「ん……」

 と、カムルは口を真一文字に結んだ。――そうか、あいつは心が読めるんだったな。こうやって会話してたら、そのうち喋れなくなりそうで怖いな。

「……要らない心配してないで早く探せば?」

 む、こいつにツッコまれてしまった……。ちょっと悔しいな。

 ――まぁ、いい。それよりもさっき、俺は自分で何かに気付いたんだが……何だっけか? 確か、形がないとかってとこで……。

「そうだっ、思い出したぞ!」

 と言ったのは、俺ではなくカムルだ。

「人のセリフを取るなっ!」

 と、一応ツッコミを入れてから、俺は自分の考えのまとめに入ることにした。

 そう、確か形がなくっていいってとこから、『思い出』とかはどうかって考えたんだったな。それなら、あんなドアやほ乳瓶だとかが入ってたのも頷けるし。

 でも……過去のことなんて結局今の俺には関係ないことかもしれないな……。あぁっ、こんな風に考えてたら宝物なんて見付からないってのに!

「おい、何か良い方法はないか? どうしても、疑心暗鬼になっちまう」

 俺はわらにもすがる思いで、カムルに訊いた。

「疑心暗鬼の使い方が間違ってる気もするけど……。――まぁ、僕に言えることは一つだけだね」

「な、何だ?」

 俺は身を乗り出していた。

「本当の君の『宝物』を探し出せばいいってことさ」

 ……もう、怒る気力もないぜ。ってか、こいつを当てにしてた俺が馬鹿だったんだな。もう一度しっかりと考え直そう。

 とりあえず、過去ではないだろうことは分かった。ってことは、やっぱ未来か。過去が思い出なら、未来は……『夢』だな。

「……眠くなったの?」

「その夢じゃない」

 カムルのたわ言は軽くあしらっておく。

 夢と言うと、やっぱ俺ならサッカー選手だろう。自分が一番好きなサッカーをずっと続けられたら、それは最高だ。

 だけど――と、また思ってしまう。

 だけど、親の反対を押し切ってまでやらなければならないことだろうか? 親だってきっと、俺のことを考えてくれてるから反対しているはずだ。その思いを踏みにじって、それが一番大事だと呼べるだろうか?

 これで、過去、未来が消えた。となれば、必然的に残るのは……『いま』だ。

 いま、形がなくて大事なものはなんだろう?

「ちょっと待ってよ。なんで形のないものに限定してるんだい?」

 と、カムルが横から口を出してきた。

「形のあるものはいつか壊れる。それを知ってたら、そんなものを宝とは呼べないさ」

「おぉ、なるほど。諸行無常、ってやつだねっ♪」

「……難しい言葉を使わないでくれ」

「ぇ? あ、ゴメンゴメン」

 まぁいい。とにかく、いま、形がなくて大事なものを挙げてみよう。

 勇気、友情、正義、愛、希望、平和、真実……。

「ん〜……、なんだかなぁ……」

 どれも大事だとは思うが、今ひとつピンとこない。どれも一つだけでは、足りない感じがしてしまうのだ。

 ――ん、待てよ? 何も宝物が一つとは限らないのか? カムルは一度も一つだけだなんて言ってないし……。

 俺はカムルの顔を見た。相変わらず、ニヤニヤと笑っている。俺はその笑みを、肯定と受け取った。

 一つでなくても良いとなると、これもまた面倒だ。さっき挙げたようなものを入れてもいいが、その分一つとして入れ忘れがあってはダメだろうし、正しくないものが一つでも入っていたら、その時もまたダメだろうからだ。一つと決まっている方が、よっぽど楽かもしれない。何か定義できれば、それでもいいけど……。

 まったくもって困った。だいぶ答えに近づいたと思ったら、とんでもなく大きな壁だ。一つで全てを言い表すことの出来る言葉があればいいのに……。全部一つじゃ足りないから、こうなるんだ。

 ――一つじゃ足りない……。

 一つじゃ足りないのは、俺もそうだよなぁ。俺一人じゃあ何も出来ない。たくさんの人たちのお陰で、俺がいるんだもんな。――いや、人だけじゃない。たくさんのモノやコトのお陰でもある。それも数え切れないほどたくさんの……。

 ――あれ、ちょっと待てよ……? これって定義になるんじゃないか?

「――なぁ、これが答えだろ?」

 俺は、カムルに笑いかけた。

「さぁ、何のこと?」

「とぼけんなよ。俺の心の中を覗いてたんだろ?」

「……君の口から直接聞きたいね」

 カムルは真っ直ぐに俺を見た。

「そうか……じゃあ、言おう」

 俺は、もったいぶって間を取った。

「俺の宝物は、俺自身だ」

 断言する俺に、カムルは驚いたようなジェスチャーをして見せた。

「それはまた、スゴイナルシズムだね」

「もちろん、俺だけって訳じゃないさ」

「んじゃあ、後はなんだい?」

「自分を形作るもの全てが宝物だ」

 フム……と、カムルは今度は考える仕草をして見せた。

「そう考えた根拠は?」

 俺は自信を持ってそれに答えてやった。

「まず第一に、俺がいなければ、これが宝だって言うことが出来ないってこと。だから、俺自身が宝物だ。第二に、俺が存在する為には多くのものが必要だってことだ」

 ウンウンと、カムルは大きく頷いた。

「……で、形作るものってのは具体的にどんなものだい?」

「俺の住む世界に存在するもの全てだよ」

「全てねぇ……。そんなに必要かい?」

 カムルは意地悪な視線を俺に向けた。でも、俺はそれにも答えられた。

「だて、何がどこでどう支えあってるかなんて分かんないだろう? それにきっと、全てのものはいろんな所で関係があるんだ。その内の一つでも狂ってしまったら、俺は存在できなくなるかもしれない。だから、全てのものが必要で、大事で、俺にとって宝物であると思うんだ」

 カムルは、しばらくの間黙って俺を見ていた。そして、

「おめでとう、正解だよ」

 と、今までとは違う、満面の笑みで俺を称えてくれた。

「んじゃあ、早く元の世界に戻してくれよ」

 やっと帰れるのかと思うと、俺は胸が躍った。……と言っても、実際にはたぶん三十分くらいいた程度だろうが。それでも、いつもと違う場所というのは落ち着かないものだ。

「おし、じゃあ今すぐに! ……って言いたいところなんだけど」

「って、帰れるんじゃないのかよ!」

 さすがに俺も切れるぞ……。

「まぁまぁ、落ち着いて。帰る必要なんてないんだよ」

 手で俺を制しながら、カムルが言う。

「……どういうことだ?」

「ホラ、聞こえない?」

 と、カムルは耳を示した。

「別に何も……」

 と言いかけた所で、何か聞こえてきた。

 ――ジリリリリリリ、ジリリリリリリ。

 すぅ〜っと、カムルが大きく息を吸った。

「起きろっ!」




 ――目を開けると、白い天井があった。母さんがやったのか、カーテンが開いていて眩しい。段々と意識がはっきりとしてきて、俺は身体を起こした。

「夢……か?」

 気付けば、目覚まし時計がけたたましく鳴っていた。手を伸ばして、それを止める。

「夢オチだなんて、下手な小説家だっていまどき使わねぇよな」

 と、俺は苦笑した。

 ――とりあえず、両親におはようと言うために、俺は階段を下りていった。




   了

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